社長不在で“止まる会社”と、“回る会社”の差
ある経営者はこう話していました。
「私が2日いなかっただけで、
請求書が1件も発行されてなかったんです。」
中小企業では、経営者=最後の砦になりがちです。
- 取引先との交渉
- 社員の相談
- 契約・請求・入金チェック
- トラブル処理
こうした“細かいけれど重要な仕事”が、
社長やキーマン1人に集中しているケースは少なくありません。
でも、その状態は非常に危険です。
✅ その人が休んだら?
✅ 急に辞めたら?
✅ 出張や不在時、誰が決める?
…誰も判断できず、業務が止まってしまう。
一方、“回る会社”は違います。
- 情報が共有されている
- 手順とルールが明文化されている
- 役割が分散されている
- ITツールで業務の見える化・進捗管理がされている
つまり、“誰かがいないとできない”状態を作らない努力をしている会社なのです。
属人化対策の本質は、
単なるマニュアルづくりではありません。
大事なのは、業務そのものを「組織の財産」に変えること。
つまり、属人的な業務を“会社の資産”にして、再現性のある状態にすることです。
ではそのために必要なのが何か?
それが今注目されている「DX=業務の仕組み化と可視化」です。
DX=IT化じゃない。業務の“仕組み化”である
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉に、
どこか身構えてしまう中小企業の経営者は少なくありません。
- 高そうなITツールを導入すること?
- 難しいシステムを社内全員に覚えさせること?
- とにかく業務を全部デジタル化すること?
…そんなイメージを持っていませんか?
でも実は、中小企業が取り組むべきDXとは、そんな大げさな話ではないのです。
✅ DX=仕組み化と“引き継げる状態”のこと
本来のDXとは、
「業務を誰でも再現できる形に変えること」に他なりません。
それはすなわち、
- 担当者が不在でもできる状態
- 誰が見ても分かる仕組み
- 一人に依存しない業務運用
つまり、属人化の逆をいく活動こそが、DXの本質です。
✅ ITツールは“目的”ではなく“手段”
freee、Notion、Google Workspace、Chatworkなど、
多くの便利なクラウドツールが存在します。
でもそれらは、「目的」ではなく、業務を見える化・共有・分担するための“助っ人”です。
ツールを導入すれば自動的にDXになるのではありません。
大切なのは、
- どの業務を
- どこまで
- 誰がやって
- どう共有するか
を整理しながら、少しずつ“仕組み”を作っていくことです。
✅ 「業務の仕組み化=社長が手放す準備」
DXの副産物として最も大きいのが、
社長やキーマンが、業務を“任せられる状態”になれることです。
情報・判断・実行が他の社員にも伝わり、
「社長がいなくても会社が止まらない」状態が実現します。
DXとは、単なるIT化ではありません。
業務の見える化+共有化+自走化のプロセスです。
そしてそれは、大企業でなくても、
3ヶ月で小さく始めることが可能です。
3ヶ月で属人化を脱却する実践ステップ
「属人化をなくしたい」
「仕組み化したい」
そう思っても、どこからどう手をつければいいかわからない──
そんな方に向けて、本書では
3ヶ月で属人化から脱却する具体的なステップを紹介しています。
ポイントは、「完璧を目指さないこと」と「一気に全部やろうとしないこと」。
この章では、月ごとのアクションをシンプルに整理してお伝えします。
✅ 1ヶ月目:棚卸し → 可視化 → 簡易マニュアル
ゴール:属人化の正体を“見える化”すること
- 担当者ごとに業務リストを作成(属人度・影響度を評価)
- 手順・判断ポイントを書き出して業務を棚卸し
- A4一枚でOKの簡易マニュアルを試作する
この段階では「書ける範囲だけでOK」です。
とにかく、“頭の中にあるやり方”を外に出すことが最初の一歩です。
✅ 2ヶ月目:引き継ぎ実験 → 改善 → 情報共有
ゴール:他の人でも再現できる状態に近づける
- 実際に別の人に業務をやってもらう(代替実験)
- つまずきやミスの原因をマニュアルに反映
- NotionやGoogleドライブなどで“見える場所に置く”
この時期は「失敗してOK」。
むしろ“うまくいかないポイント”が明確になることが収穫です。
✅ 3ヶ月目:ツール導入 → 試験運用 → キーマン“手放し”実験
ゴール:人に依存しない業務の仕組みをテスト稼働させる
- スケジュール管理、ファイル共有、情報整理などにツールを導入
- 小さな業務単位で試験運用を始める(例:請求、在庫管理)
- キーマン不在を仮定して1日業務を回してみる(“手放しシミュレーション”)
この最終月では、仕組みが回るかどうかを“実験的に”試すのがポイントです。
問題が起きても「調整できる余地がある」という感覚を持つことで、社員も安心できます。
3ヶ月と聞くと短く感じるかもしれませんが、
小さく始めて繰り返すことで、組織は確実に変わります。
一歩ずつでもいいから、「止まらない会社」へ向かうための土台を築いていきましょう。
ツール導入は“小さく、確実に”が鉄則
「DX」と聞いて、すぐに高機能なシステムや
専門業者の導入を想像する方も多いかもしれません。
しかし、属人化解消のためのツール導入は“ミニマムで確実に”が鉄則です。
✅ よくある失敗例
- 一度に複数の新ツールを導入し、現場が混乱
- 管理画面が複雑で誰も使わなくなる
- 社内で説明・教育の時間が取れず“放置ツール”になる
- システムに業務を合わせて現場が疲弊する
こうした失敗の共通点は、
「会社の業務に合わせてツールを選んでいない」ことです。
✅ 成功のコツは「1業務1ツール」から
たとえば以下のようなツールは、
属人化している業務の“1つ”に絞って導入するだけで、大きな効果を発揮します。
業務 | おすすめツール例 | 効果 |
---|---|---|
請求書作成 | freee / MoneyForward | 属人化しがちな請求処理の手順を標準化 |
ファイル管理 | Google Drive / Dropbox | 社員全員が同じ場所で探せる「共有の棚」を作る |
業務メモ・手順 | Notion / Scrapbox | ノウハウや判断の言語化・共有が可能に |
チャット・報連相 | Chatwork / Slack | メール依存を減らして“社内の見える化”が進む |
タスク管理 | Trello / Backlog | 業務の“進み具合”を見える化して属人化を防ぐ |
ツールはあくまで“業務の属人性をほぐす潤滑油”です。
やみくもに増やすと混乱しますが、的を絞れば効果は抜群です。
✅ ポイントは「ツールに慣れるのではなく、“仕事のやり方”を整える」
大切なのは、
ツールに人が合わせるのではなく、
“人に依存していた仕事”を、ツールで整理・共有できるようにすること。
そのためには、
- 操作が簡単
- スマホでも使える
- 他の社員にも説明しやすい
という“現場目線の使いやすさ”を優先しましょう。
いきなり全社導入ではなく、
「1業務だけでいいから、小さく試す」
それが属人化をほぐし、DXを定着させる最大のコツです。
属人化の“再発”を防ぐ2つの習慣
属人化は、一度解消したからといって、終わりではありません。
時間が経てば、また自然と属人化してしまうのが現場のリアルです。
なぜなら──
- 業務は日々進化し、変化する
- 担当者の“無意識の工夫”が蓄積される
- 新人には説明せず「前と同じで」となる
このように、改善と共に属人化も“復活”するからです。
そこで重要になるのが、
属人化の再発を防ぐための「仕組み」でなく、“習慣”です。
特に有効なのが、次の2つ。
✅ ① 週1回の業務共有ミーティング(または対話時間)
属人化が起きる最大の理由は、「会話がないこと」。
だからこそ、“定期的に業務のやり方を話す時間”を習慣化することが有効です。
方法はシンプルでOK:
- 担当者が最近の業務を5分で共有
- 気づいた工夫・判断・例外対応などを軽く紹介
- 他の社員が質問・コメント
こうした“業務を話す文化”があれば、
ノウハウが表に出てきやすくなり、自然と見える化が進みます。
✅ ② “誰でも見られる”情報整理のルールを決める
- 手順書はどこに保存するか?
- ファイル名・フォルダの付け方は?
- Notion/GoogleDrive/Slack などの使い分けは?
これらがバラバラだと、せっかく作ったマニュアルも“誰も見ない”状態になります。
「迷わず探せる・開ける・触れる」情報設計が、属人化の再発防止に直結します。
ここで重要なのは、
この2つを「一度だけのイベント」にしないこと。
“ルールではなく、習慣にする”ことです。
たとえば:
- 毎週金曜の朝は“業務を話す5分間”を設定
- 新しく作成・更新されたマニュアルはSlackで通知
- Notionに更新履歴・コメントを残すことをルール化
こうした日常の流れの中に仕組みを溶け込ませていくことで、
属人化は起きづらくなります。
業務は日々変わります。だからこそ、
属人化は“予防”しつづけるものと捉えて、
小さな習慣を重ねていくことが何よりの対策です。
まとめ──社長が手放すことで、会社は伸びる
「社長がいないと会社が回らない」
これは一見、頼られている証のように見えるかもしれません。
しかし実際には──
社長がいないと回らない会社は、非常に脆い組織です。
- 現場の業務が見えない
- 判断のボトルネックが生まれる
- 経営判断が「現場の穴埋め」で止まる
- 採用・育成・拡大の余裕が持てない
つまり、“いつまで経っても社長が現場から抜けられない”構造が固定化してしまうのです。
だからこそ、「手放す準備」が必要です。
それは、属人化の排除であり、
業務の見える化・共有・仕組み化であり、
つまりは“会社を一段上に進める経営戦略”なのです。
✅ 社長が手放すと、社員が育つ
手放すことで、社員が挑戦できるようになります。
「任された」「信頼された」という意識が芽生え、
やりがいと責任感が自然に育っていきます。
✅ 社長が手放すと、事業が広がる
手放した分、社長は
新規事業・人材戦略・資金計画・ブランディングなど、
本来注力すべき“経営の仕事”に時間を使えるようになります。
✅ 社長が手放すと、会社が止まらない
誰かが辞めても、休んでも、会社は回り続ける。
それが「仕組みで動く組織」です。
この状態を作っておけば、どんな外部変化にも強くなれます。
このブログ記事は、電子書籍
📘『もし辞められても、慌てない会社になる──小さな会社のためのDX入門講座』
の内容をもとにお届けしました。
📥 書籍はこちら ▶ Amazon Kindleで読む
これで3回シリーズのブログ記事は完結です。
“辞められたら困る”という不安を、“いつ辞めても大丈夫”という安心へ。
属人化からの脱却は、未来の経営を変える第一歩です。
コメント